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アメとムチ

(荀子箚記)
アメとムチという言葉は、嫌う人もいる。
しかし、人を動かす上で有効な手段である。

この、アメとムチをどうふるうか、その基本の考え方が『荀子』にある。

賞は過分であってはいけない。
また、刑は過重であってはいけない。

賞が過分だと、本来功績が無い者まで賞してしまう。
刑が過重だと、罪の無い者まで罰してしまう。

もし、不幸にも間違うとしたなら、賞が過分であってもいいから、刑が過重になってはいけない。

罪の無い者を罰するよりも、功績が無い者に賞を与える方が、まだましだからである。

部下を評価する時、今でも充分に通用する考え方である。

出典 (明治書院)新釈漢文大系5 『荀子 上』藤井専英著 399頁
巻第九 致士篇第十四
賞不欲僭、刑不欲濫。賞僭則利及小人、刑濫則害及君子。若不幸而過、寧僭無濫。與其害善、不若利淫。

賞は僭(せん)を欲せず、刑は濫(らん)を欲せず。
賞、僭すれば則ち利小人に及び、刑、濫すれば則ち害君子に及ぶ。
若し不幸にして過(あやま)たば、寧(むし)ろ僭するも濫すること無かれ。
其の善を害せんよりは、淫を利するに若かざるなり。

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年功序列という制度

(淮南子箚記)

今や、年功序列といった人事制度をとっている会社はないであろう。
しかし、年功序列をやめて、本当に会社は良くなったのだろうか。

もしくは、年功序列をやめずにいたら、会社は悪くなったのであろうか。
よく分からないし、はっきりしない。

ということは、年功序列であっても無くても、それほど大きな違いは無かったのかもしれない。

大きな違いが無ければ、年功序列の方が、多くの人が精神的には幸せに暮らせたかもしれない。

自分より年下に仕えるよりも、年上に仕える方が、気分的には楽な筈である。
そして、年長者は、親のように兄や姉のように、年少者を愛して育てていく、これも気分的に悪いものではないだろう。

「愛せず利せざれば、親しき子も父に叛(そむ)く」
というが、20代30代の上司が、40代50代の部下を愛して、その利益を考えてやるといったことが出来るのだろうか。

出典 (明治書院)新釈漢文大系55 『淮南子 中』楠山春樹著 525頁
巻十 繆稱(びうしょう)訓
善御者不忘其馬、善射者不忘其弩、善爲人上者、不忘其下。
誠能愛而利之、天下可従也。弗愛弗利、親子叛父。

善く御する者は其の馬を忘れず、善く射る者は其の弩(ど)を忘れず、善く人の上爲(た)る者は、其の下を忘れず。
誠に能く愛して之を利すれば、天下、從う可(べ)きなり。
愛せず利せざれば、親しき子も父に叛(そむ)く。

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年金制度

(孟子箚記)
鰥夫(おとこやもめ)、寡婦(やもめ)、独者(ひとりもの)、孤児(みなしご)、という4者は、支えてくれない家族を持たない人たちである。

彼らを助けるのが政治だと、孟子は言う。
古代の聖王である文王は、必ず彼らのことを優先したというのである。

今の時代であれば、貧しい人への生活保護ということだろう。
この生活保護が悪用されているという報道が多い。

また、悪用ではなくても、場合によっては年金よりも有利だと聞く。
一生懸命、年金を払い続けてきた人にとっては、腹立たしい話である。

かといって、本当に困っている人たちを救わない訳にはいかない。
そもそも、年金制度という制度自体に、無理があるのだろう。

ミルトン・フリードマンは、『資本主義と自由』の中で、
「年金の強制加入は、コストばかり大きく、得るところがほとんどない制度である」
と述べている。

その理由として、年金制度が充実しても生活保護を受ける人の数は減っていないということ。

また、年金を扱う政府組織が肥大化し非効率化していくこと。

さらに、強制年金は競争にさらされることが無く、その基金を効率に運用することが出来ない、といったことを挙げている。

つまりは、国による年金制度などを行うよりも、生活保護一本の方が、コスト的にも効果的に優れている、と言うのである。

フリードマンが、この考えを主張したのは半世紀も前のことである。
今の時代を見ると、彼が正しいのではないかと、思えている。

どうにか年金制度を立て直そうとする議論が盛んだが、根本的な疑問として、年金制度というものの是非を問うことも大事ではないだろうか。

一定の税金以外、個人の所得については個人に任せる。
そして、困窮者を助けるというのが、孟子を含めて、古代の賢者の考えである。

出典 (明治書院)新釈漢文大系4 『孟子』内野熊一郎著 60頁
梁惠王章句下
老而無妻曰鰥、老而無夫寡、老而無子曰獨、幼而無父曰孤。此四者、天下之窮民而無告者。文王發政施仁、必先斯四者。

老いて妻なきを鰥(くわん)と曰い、老いて夫なきを寡(くわ)と曰い、老いて子なきを獨(どく)と曰い、幼にして父なきを孤と曰う。
此の四者は、天下の窮民にして告ぐる無き者なり。
文王、政(まつりごと)を發し仁を施すに、必ず斯(こ)の四者を先にせり。

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西森憲司

Author:西森憲司
高知県高岡郡佐川町生れ
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 高知学芸高等学校
 早稲田大学政経学部
千葉県大網白里町季美の森在住
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仕事:マネジメントの研究と教育
    東洋思想の研究 
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